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【介護福祉士が解説】全国民必須の知識!認知症の基礎知識と基本対応

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こんばんは。約12年間介護の仕事をしており、現在は訪問介護事業所をやりつつ、介護に関する情報発信をしている、介護福祉士のハレくん(@harekunoku)です。

 

今日は、認知症の基礎知識と基本対応について徹底的に解説します。永久保存版のガチ記事です。

 

おそらくこれまでの記事の中で最も長くなりますが、超高齢化社会の日本において、認知症の基礎知識は、介護従事者ではない方にとっても必須の知識なので、是非読んでおいて頂きたい内容です。

 

この記事1つで、認知症に関する基礎知識は完全に学べるので、いつでも読めるようにしておいて頂ければと思います。

 

では早速行きましょう。

 

認知症とは

認知症とは、記憶や思考などの認知機能が低下して、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態の事です。

 

認知症と言っても、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、などなど、色んなタイプがあります。

 

ですが今日は、基礎知識と基本対応という事なので、どのタイプの認知症にでも適用できる知識と対応について話していきます。

 

認知症の中核症状について

認知症の中核症状についての知識は、超重要かつ鬼必須の知識になります。

 

ショートケーキで言えばイチゴの存在くらい重要です。イチゴの乗ってないショートケーキなんて、ただのカステラですからね。だったら長崎のカステラ買いましょうよって話です。

 

認知症の中核症状とは、認知症という病気の症状だと思って下さい。風邪で言うところの、発熱や咳やクシャミです。

 

認知症の中核症状には、①記憶障害、②見当識障害、③理解や判断力の障害、④実行機能障害、⑤失語、⑥失認・失行、これら6つがあります。

 

①記憶障害

①の記憶障害とは、読んで字の如く、物事を記憶する事ができなくなる事です。

 

高齢者特有の、もの忘れとは全く違うものです。

 

『財布を何処かにしまったけど、何処にしまったかを忘れてしまった』というのがもの忘れで、『財布を何処かにしまった行動自体を忘れている』のが記憶障害です。

 

認知症が進行すると、直近の出来事が定着しづらく、完全に忘れてしまう事も多くなりますが、認知症になる前の昔の出来事は比較的よく覚えています

 

なので、認知症の人と会話をする時は、昔話主体で行うと、※周辺症状が出にくく、話も弾みます。

 

※周辺症状については後で解説します

 

②見当識障害

②の見当識障害とは、自分の今の状況が把握できなくなる事です。

 

今の季節、西暦、時間が分からなくなったり、今自分のいる場所が何処なのか、ここで何をしているのか、という事が分からなくなる事で、見当識障害の症状が、最もトラブルに繋がりやすい症状になります。

 

例えば、自分が今いる場所が何処か分からず道に迷ってしまい、行方が分からなくなってしまう事もあります。

 

また、季節や日時、目の前にいる人が誰なのか、という事も分からなくなってしまうため、約束を守る事や予定を遂行する事、人との付き合いを継続する事ができなくなり、周囲との人間関係が壊れてしまう原因にもなります

 

認知症の人の言っている事が間違っている場合、大体は見当識障害の症状によるものです。

 

間違っていても否定をせず、話を合わせる対応が重要になります。

 

③理解や判断力の障害

③の、理解や判断力の障害は、脳の情報処理能力の低下により、理解力と判断力が低下している状態の事です。

 

例えば、新しい洗濯機を買ったとして、使い方を説明しても理解する事ができません。

 

判断力も低下しているため、「型崩れしやすい服はネットに入れて洗濯してね」みたいな声をかけても、その判断をする事はできません。

 

洗濯機を使ってもらうなら、使い方の順序を極限までシンプルに書き留めたメモを、ネットに入れて洗濯するものがあるなら、具体的にどの服をネットに入れるのかを書き留めたメモを、この2つを洗濯機に貼り付けておく等の対応が求められます。

 

いかに理解と判断をしなくて済むかという事を意識した対応が必要です。

 

④実行機能障害

④の実行機能障害とは、物事の計画を立てた後、その計画を効率よく行う事ができなくなる障害の事です。

 

例えば、朝薬を飲む事を忘れてしまった事を夕方に気づいた場合、『朝の薬は飲み忘れてしまったから、この薬は置いておいて、夕方の薬をのもう』という計画を実行する事ができません。

 

飲み忘れた朝の薬を夕方に飲んで、次の日の朝に夕方の薬を飲んでしまったりしてしまうのが実行機能障害です。

 

何枚ものメモ書きや、周りのサポートが必要です。

 

⑤失語

⑤の失語とは、自分の気持ちを言葉として表現する事や、相手から自分に向けられた言葉の意味を理解する事が難しくなっている状態の事です。

 

物の名前や人物の名前が分からず、「え〜っと…なんだったかな…えっと…」というような言葉の詰まりが見られたり、そもそも会話が成立しない場合もあります。

 

その人の事を良く知っていないと対応は難しくなります。

 

⑥失認・失行

失認とは、自分の身体状況や、自分の体と物との位置関係が分からなくなる事です。

 

例えば、椅子に座ろうとする時に、椅子が遠くにあるのに、自分のすぐ側にあるように思えてしまい、その場で座ろうとされたりします。

 

失行は、これまで日常的に行ってきた事ができなくなる事です。身体的には可能でも、できなくなるのが失行です。

 

箸を持つとか、靴を履くとか、テレビを付けるとか、そういった、毎日当たり前にやっていた事が出来ない状態です。

 

認知症の周辺症状(BPSD)について

ここまでは、認知症の中核症状について簡単に解説してきました。

 

ここからは、認知症の中核症状が出現した時の対応のポイントを説明したいのですが、その説明をする前に、認知症の周辺症状(BPSDとも言う)について解説します。

 

これも、超超超重要な知識になります。

 

お刺身でいうところの魚くらい重要です。魚の無い刺身なんて、ただの大根と大葉ですからね。だったら大根と大葉買おうよって話です。

 

認知症が原因となって引き起こるトラブルの殆どは認知症の周辺症状によるものです。

 

『認知症の周辺症状』なんて、介護業界で仕事をしていない人は聞いた事もないですよね。

 

周辺症状とは、認知症の中核症状に付随して発生する症状の事です。

 

周辺症状には、妄想(もの取られ妄想等)、せん妄(意識が曖昧)、幻覚、睡眠障害、徘徊、暴言、暴力、介護拒否、不潔行為、異食、多動、不安、抑うつ、などなど、様々な症状があります。

 

これらの周辺症状は、上述した中核症状の延長線上で起こります

 

例えば、記憶障害によって、『タンスの引き出しに入れていた財布が無くなった』と主張されたとします。

 

実際は、タンスの引き出しから下駄箱の上にある引き出しに自分で移動させているんですが、その行動自体を忘れてしまっているので、『誰かに盗まれた』という発想になり、もの取られ妄想に発展するんです。

 

地震に例えるなら、認知症の中核症状は地震による揺れで、周辺症状は、地震の影響で発生してしまった火災です。

 

中核症状と周辺症状を見比べてもらうと分かると思うんですが、生活に大きな支障をきたすのは、周辺症状の方です。

 

中核症状だけなら、プロの介護士や周りの人のサポートでなんとかなる場合が多いですが、周辺症状の対応は非常に難しいものになります。

 

(周辺症状へのアプローチ方法は、慣れやテクニックが必要になるので、この記事には書きません。それについてはブログ内に沢山有益な記事があるので、気が向いた時に読んでみて下さい。)

 

周辺症状は、もの取られ妄想による近所トラブルを発生させたり、夜中に危険な場所を徘徊したり、暴言や暴力行為によって誰かに怪我をさせたりと、大きな問題に発展しやすく、認知症の方本人が孤立する原因にもなります。

 

何が言いたいかと言うと、常日頃から、中核症状が現れた段階で適切な対応をとることで、周辺症状が発生する確率を大幅に下げられるんです。

 

周辺症状をゼロにする事は絶対にできませんが、中核症状へのアプローチが適切に行えれば、認知症による悪影響を最小限に留める事ができます。

 

周辺症状を抑える事ができれば、ご本人もご家族もその他周りにいる方も、トラブル無く穏やかに生活を送る事ができます。

 

介護事業所や介護施設は、そのために存在すると言っても過言ではありません。プロが集結しているので、認知症の周辺症状を極限まで発生させない環境になっています。

 

認知症の中核症状への適切な対応

周辺症状について理解してもらえたところで、認知症の中核症状に対する適切な対応について解説していきたいと思います。

 

中核症状の説明のところでも少し解説はしていますが、ここでは掘り下げて解説していきます。

 

①記憶障害への対応

記憶障害への対応として重要なのが、忘れている事を指摘しない事です。

 

例えば、「財布が無くなった」と発言があった時に、「自分が何処かに置いたんだろ」と指摘してしまうと、もの取られ妄想等の周辺症状に発展してしまう確率が高くなります

 

本人からすれば、確実に無くなっているんです。それを否定して指摘してしまうと、不安からネガティブな発想を引き起こします。

 

なので、財布が無くなったと言われたなら、「一緒に探してみよう」「もし見つからなかったら警察に相談してみようか」などと声をかけ、本人の主張に寄り添うようにして下さい。

 

心が落ち着いた状態だと周辺症状は発生しにくくなります。

 

②見当識障害への対応

見当識障害への対応も、記憶障害への対応と同じく、否定せず認知症の方の話に合わせる事が重要になります。

 

例えば、認知症の方が自分の事を他の誰かと勘違いしている時に、『自分は〇〇だよ!』と否定してしまうと、本人は、事実を否定されている感覚に陥り、暴言等の周辺症状が出る可能性が高くなります

 

見当識障害の症状が出ている時は、TTHAに徹して下さい。あ、徹底的に話を合わせるの略です。

 

否定をされると感情的になりやすいのも周辺症状の1つなので、見当識障害に対しては、聞き役に徹する事が重要です。

 

ですが、場所や時間が分からずに不安を伴っている時は、昔話を振って気を紛らわせてもらったり、何か他に集中するような事(裁縫など)を上手くやってもらいましょう。

 

頭の中の不安を一旦でも取り除ければ、不安だった事自体を忘れてもらえるので、症状が消失します。

 

③理解や判断力の障害への対応

理解や判断力の障害への対応は、理解と判断に割く脳のリソースが極めて小さくなるように、曖昧な表現をせず、シンプルに物事を伝えるようにする事と、極力コチラが判断してあげる事を意識して下さい。

 

伝える時は、「〇〇だから△△なので、□□にしておきますね」と、事情をシンプルに伝えた上で判断してあげると、不安や混乱、感情的になるといった周辺症状が出にくくなります。

 

④実行機能障害への対応

実行機能障害への対応は、助言をしつつリードしてあげる事です。

 

本人の話をしっかりと聞きつつ、③の理解や判断力の障害への対応と同じように、行動や言動を導いてあげて下さい。

 

また、複雑な計画や同時に複数の判断が必要になる情報に触れると、③で述べたような周辺症状が現れてしまうので、生活がマルチタスクにならない事を出来るだけ意識して下さい。

 

⑤失語への対応

失語への対応としては、その人の事をよく知っておく必要があります。

 

介護のプロである介護福祉士でも、初めは上手く対応できません。

 

その人が何を伝えようとしているのかどんな言い方をすると伝わりやすいか、という事は、その人の性格や生活歴を知っていないと気づけない事があるからです。

 

介護職には気づきが重要とよく言われるのですが、気づくためには、ご利用者の事を知ろうとする姿勢が重要なんです。

 

⑥失認・失行への対応

失認や失行に関しては、環境整備が最も重要な対策になります。

 

必要最低限の物だけを使用するようにする事で、混乱を最小限に留められるからです。

 

例えば、お風呂にシャンプーとリンス、2つのボトルを置くよりも、リンスインシャンプーにして1本だけ置くようにするような対応です。

 

また、自宅でもできるような効果的なリハビリもあります。

 

介護者が声をかけながら、できなくなった事を反復練習(繰り返し行ってもらう)してもらう直接的方法や、歯磨きができなくなってしまった場合で、歯磨きをする時の行動の順番を図で示しながら分かりやすく伝える代償的方法です。

 

これらのリハビリで改善が見込めます。

 

認知症を理解する事の必要性

認知症の中核症状と周辺症状についてと、対応のポイントについて解説してきました。

 

認知症についての知識がないまま認知症の人と接していると、症状を悪化させてしまい、人間関係上でのトラブル等を引き起こしてしまう頻度が高くなってしまいます。

 

超高齢化社会の日本では、介護施設に入所したくてもできない方が溢れ、認知症があっても自宅で生活を続ける方が益々増えてくるので、介護従事者でなくとも、認知症の方と接する機会が増えます。

 

認知症に関する基本的な知識は、全ての人が持っておくべき知識なんです。

 

最後に

最後に、介護従事者として、どうしても伝えておきたい事があります。

 

認知症の人は、出来事を記憶としては忘れてしまっても、心では覚えています。別に名言を言いたい訳ではなく本当の話です。

 

誰かと過ごした時の出来事は忘れても、楽しかったという感情は残るんです。なので、少しのサポートがあれば、人間関係を構築していく事も社会の一員として生活していく事も可能です。

 

記憶は無くなっても心では覚えているという事について詳しく書いた記事があるのでリンクを貼っておきます。この記事と併せて読んでみて下さい。

【認知症の真実】殆どの人が認知症について勘違いしている件 - 介護職員の戦闘力が上がるブログ

 

この記事は本当に多くの方に見てもらいたいので、もし内容がタメになると思って頂けたら是非拡散をお願いします。

 

もし良かったら、職場内での研修などにも使って下さい。とにかく広まってほしいという一心なので、何処ででも自由に使ってもらえたら幸いです。

 

という事で、長くなりましたが以上となります。

 

おやすみ大根。

 

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